第一章 剣の故郷 1 「中国って広いなあー。これが全部ひとつの国だなんてウソみてえ」 真ん中の席の右の窓際に座った龍は車窓に流れる異国の景色を大喜びで眺めた。さっきまでのくたびれた様子とは打って変わって、その姿はバスで遠足に向かう幼稚園児のようだ。そんな龍の隣で、窮屈そうに身体を縮めた季村至が迷惑そうに言った。 「龍君、ここの座席狭いんだから、暴れないでくれる?」 「何だよ、頼んでねえのについてきたくせに」 「あのね、何度も言ってるように、僕はコーチから依頼されたの。君たちは全国大会の出場選手なんだから、健康管理や怪我……」 「はいはい、わかりました」 「まあ、いいじゃない。旅は道連れ、世は情…