はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と二十六 「ゼンイ ヲ タブラカス」 「たぶらかす」 「えっ」 「たぶらかす、の、漢字、知ってるかい」 「た、たぶらかす、ですか」 たぶらかす。 いったい、どんな漢字なのだろう。 全くもって、見当も付かない。 「存じ上げないです」 「僕も、つい最近だよ、知ったのは」 ますます、興味津々。 すると、Aくん、本棚の前に置かれていたホッチキスで束ねただけの小さなノートをペラリと捲(メク)るや否や、マジックで、その漢字を書いてみせる。 う、うわっ。 「も、ものスゴい漢字ですね」 「だろ。僕も、初対面の時は、さすがに、ちょっと、たまげた」 たまげた? ドコの方言? …