1901年(明34)至誠堂刊。松林派の門人の一人と思われる松林小円女(しょうりん・こえんじょ)は東京出身の女流講談師だが、詳細は不明。この演目は明治の東京で実際に起きた人を陥れるための殺人事件を題材としたと思われる。小円女にはあと1作の講演本「まぼろし小僧」が出ている。ソツのない、てきぱきとした口調で読みやすい。特に興味深いのは、主人公と許婚の約束を交わした娘が親の脅迫によってやむなく別の男と婚礼を挙げるという当日に、式の席上で男の旧悪を暴露し、式をぶち壊しにするという一段で、女性講談師ならではの意気込みが感じられる。 表題の演目は同じ版元から2カ月前に下記の通り別の題名で2分冊で出版されてい…