今回は太閤検地のもっとも重要な論点のひとつ、すなわち小農自立の歴史的前提となる奴隷的存在の譜代下人の実態を示す「泉郷百姓窪田十郎左衛門者欠落之事」との事書を持つ文書を採り上げる。本文書は一般向けの歴史書である安良城盛昭『太閤検地と石高制』*1や佐々木潤之介編『日本民衆の歴史3』*2所収の藤木久志「戦国大名と百姓」でも紹介されているのでご存じの方も多いと思われる。 泉郷*3①百姓窪田十郎左衛門者欠落之事 卯年*4欠落、豆州みろく寺*5ニ有之、 壱人女梅②同子壱人 午*6八月欠落、同所有之、 壱人女乙 午*7六月欠落、武州符中*8ニ有之、 壱人丹 巳*9九月欠落、豆州狩野内立野*10ニ有之、 壱人…