これは自分が考え出した料理でもない。学生街の定食屋にはありがちなメニューかもしれない。しかし豚肉とネギのカレー粉炒め、というだけでそれ以上の詳細はわからない。 が、自分の中でこの料理の出どころだけははっきりとしている。それは小説、角川の文庫本だった。「恋人たち」とその続編「はましぎ」の二連作。作者は立原正秋。大学生の頃に友から紹介されて、貪るように読んだ。何度も読んだ。手あかがついて割れかけた2冊は今も書棚から離れない。立原正秋は純文学と大衆文学のはざまと言う立ち位置だったのだろうか。実際1960年代に芥川賞は候補となり後に直木賞を受賞している。 この二冊に関してはストーリーと言うよりも、青春…