岩波文庫194ページ「つらつらこの婆子(ばす)と徳山と相見(しょうけん)する因縁をおもへば、徳山のむかしあきらめざることは、いまきこゆるところなり。龍潭をみしよりのちも、なほ婆子を怕却(はきゃ)しつべし。なほこれ参学の晩進なり、超証の古仏にあらず。」 よくよくこの婆さんと徳山禅師が出会った話を考えてみると、徳山禅師が過去のこの時点で大宇宙の真理がわかっていないということが、今も知られているところである。龍潭禅師の下に参じた後もやはりこの婆さんをおそれていただろう。徳山禅師は修行者として遅れているし、実際の経験を踏まえてこれを乗り越えて大宇宙の真理に到達している古仏ではない。 徳山禅師は老婆の問…