12の短編が入っていて、なかなかの難物だった。名前だけは知っているがどんな作品があるのか知らない作家(幸田露伴など)の作品が読めてよかった。 明治という時代の熱が伝わってくる気もするし、隔世の感を抱きもする。でも、改めて読み直してみるのは良かった。 「細君」 坪内逍遥 この人も名前は有名だが、作品を読んだことはなかった。 作中の「細君」は、学問が頼みではあるが愛嬌に乏しく、自立する意欲もなく、同窓生たちへの見栄から「学者」という一点を決め手に結婚してしまう。クラスメイトたちに対して「見事立派に片付いて鼻をあかして見せようぞ」という思いを抱き「夫の人柄に好みはない。ただ中等より以上の宅へ縁づいて…