埃吹く街―歌集 (短歌新聞社文庫)作者:近藤 芳美短歌新聞社Amazon 近藤芳美の第一歌集については諸説ある。『早春歌』と言う人もいるし、『埃吹く街』と言う人もいる。発行日は『埃吹く街』の方が早かったようだが、いずれにせよ、私は後者を近藤芳美の処女作として認めたい。作家の本質はその処女作にすべてが表われるという。近藤芳美はこの歌集に、自身の個性のみならず、戦後の時代精神ツアイト・ガイストを表現した。その結果、本書は彼を戦後歌壇の寵児たらしめ、以後、彼は『埃吹く街』を念頭に置かずして、新たに作品を詠むことも、歌集を編むことも叶わなくなった。作品は作家を代表する。『埃吹く街』は近藤芳美の代表作で…