”山手線の電車に跳ね飛ばされて怪我をした。 そのあと養生に一人で但馬の城崎温泉へでかけた。” 志賀直哉の”城崎にて”はこうはじまる。 この中に、次のような一節がある。 “ネズミは一生懸命泳いで逃げようとする。ネズミは首のところに七寸ばかりの魚串が刺し貫いてあった。(中略)ネズミは這い上がろうとするが、魚串がつかえて、又水に落ちる。 ネズミは助かろうと、川の中へ泳ぎ出ては流される。” これを読んで、ある男を思い出した。 男は自転車に跳ね飛ばされて怪我をした。仕事ができなくなって釜ヶ崎へながれついた。しばらくいたがなじめず、此処を出た。男は彷徨い歩き、気が付くと四天王寺に立っていた。 つかれきった…