ミカン科の落葉低木である「サンショウ」(Zanthoxylum piperitum;第1図)は,香辛料の代表的なものであるが健胃剤としても有名である。漢方薬でもっとも使われるものに「大建中湯」がある。便秘あるいは術後イレウスの予防などに使う。しかし,「サンショウ」には香辛料や薬以外にも意外な使われ方をしてきた。宮沢賢治の作品に面白い使い方が記載されている。それは,「サンショウ」の樹皮に含まれる毒を使って川魚を捕まえるというものだ。賢治の『風の又三郎』に,「サンショウ」の粉を入れた笊(ざる)を川の上流の浅瀬で「じゃぶじゃぶ」洗って川魚を捕まえるシーンが描かれている。同じく『毒もみの好きな署長さん…