僕はそこでスポーツ新聞をひろげながら、片手でライスカレーのスプーンを口に運んでいました。僕の好きな大洋の選手がトレードに出るというニュースがその一面に大きく出ていたからです。 出典 :「影法師」(『遠藤周作短編名作選』)遠藤周作 講談社文芸文庫2012 「ちょっと待った」とマイケルが抗議する。「いまのはなんだ」「知らないのか?」と杉村がとぼけた。「消える魔球といってな、昔、日本の星飛雄馬というピッチャーが投げてたボールなんだ。「そんな選手は知らないぞ」「いたんだよ。左投げのピッチャーでね。ただ、無理がたたって腕を壊しちまった」「ははは。そうか、そんなすごい男が日本にもいたのか」「ははは」「──…