あの日の、夏の野音の記憶がありありと蘇ってくる。夏。今から半年以上前は夏だったのか。信じられない。あの、夏。七月。セミがジリジリと鳴いていた、野音。ライブと共に陽が落ちていく。曲と曲の間に空白を、自然の音たちが埋めていく。曲の途中、ふと空を見上げる。ビルが、遠く周りにはそびえ立つ。やや無機質にも思える建物たちの間を、カネコアヤノの音楽が突き抜けていく。その爽快さ。この上を、ずっと行くと遠い宇宙の果てまで繋がっている。その真下に、カネコアヤノがいて、歌う。野音は音が広がる、というのが素晴らしい。地球にカネコアヤノという存在が、溶けていく。そして、その境界で、何もない無職である俺と、溶けそうな暑さ…