深い雪に埋もれたここ金木戸にも、ようやく春が訪れた。四月一日、神岡営林署金木戸製品事業所の入山日である。 標高九百九十メートルにある中の又事務所の積雪は五〇センチほどであるが、標高千三百二十メートルに位置する作業員宿舎は例年、三メートルもの雪に埋もれる。 毎年の入山ではあるが、常に私に、新しく仕事に向かうのだという気持ちと同時に、しばらく離れていた故郷、住み家へ帰るような懐かしい感情を抱かせる。 四月一日、朝五時起床。 朝食を手短に済ませると、直ぐに寮を出発。オートバイに飛び乗る。 さすがにオープンカーは寒く、ブルで除雪しただけの林道はガラガラと落石が転がっており、非常に危険である。運材が始ま…