兵庫県は地理的条件や歴史的背景から、古くより交易・流通の要衝となってきた地域であり、その産業史は、港湾都市としての発展、近代工業地域の形成、戦後の高度成長期を経た産業構造の変遷、そして現代の多様な産業クラスターの形成へと続く長い流れを持っている。以下に、その大まかな変遷を整理する。 1. 前近代から近世まで:内陸・沿岸交易と農漁業 兵庫県は南北に長く、南部は瀬戸内海や大阪湾に面しており、北部は日本海に面しているため、古来より水運や海上交通を利用した交易が盛んであった。 • 中世~近世:摂津・播磨・丹波・但馬・淡路といった旧国を内包する兵庫県域は、各地域で農業や林業、漁業が営まれ、内陸部では織物…