訓読 >>> 妹(いも)らがり今木(いまき)の嶺(みね)に茂り立つ夫(つま)松の木は古人(ふるひと)見けむ 要旨 >>> 今木の嶺に茂り立つ、夫の訪れを待つという松の木は、昔のあの皇子をきっと見ていたことだろう。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』から、「宇治若郎子(うじのわきいらつこ)の宮所(みやどころ)の歌」一首。宇治若郎子は応神天皇の皇子で、異母兄の仁徳天皇と皇位を譲り合い、宇治の宮で自殺したといいます。「宮所」は、ここは古く宮のあった跡の意。「妹らがり」の「ら」は接尾語、妹のもとへ今来るの意で「今木」の枕詞。「今木の嶺」の所在は、未詳。「夫松の木」は、夫の訪れを待つように立つ松。「古人」…