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陳昌鉉

(音楽)
ちんしょうげん

バイオリン製作者。
韓国・慶尚北道梨川村生まれの在日コリアン。
1943年、経済的理由から来日。福岡県の建設工事現場などで働きながら旧制中学の夜間部を卒業した後上京、米兵相手の「輪タクの仕事などで学費を稼ぎ、バイオリンのレッスンを受けながら明治大学文学部英文学科(2部)に入学。
 明大在学中、大学構内で「ストラディバリウス」という世界最高峰のバイオリンの存在を知り心奪われる。また、航空工学者でバイオリン研究者でもあった著名な糸川英夫博士の講演会での「ストラディバリウスの音の解明は永遠に謎であり、人間の力が及ばないもの」との言葉が琴線(きんせん=外界の事物に触れてさまざまな思いを引き起こす心の動きを琴の糸にたとえた語)にふれ、バイオリン職人になることを決意する。 
 明大卒業後、意を決して、バイオリンの材料である唐檜などの木材が入手しやすい木曽・福島に移住、あばら家に住み、河砂利をとって売る極貧の生活に甘んじながら、独学でバイオリン作りを始める。
 それから5年後、当時のバイオリン3巨匠の一人であった篠崎弘嗣東京高等音楽学院(現国立音楽大学)教授に見出されて東京に戻り、子供用のバイオリンを作り、出荷を始める。一方、来日した演奏家の楽屋に押しかけては、演奏用のバイオリン見せてもらうなどしながら、大人用やプロ向けのバイオリン製作に打ち込む。
 そうした努力がしだいに実り、評判が徐々に出てきた頃の1976年、ペンシルバニア大学で開催された「国際バイオリン・ビオラ・セロ製作者コンクール」において、6部門中5部門で金メダルを受賞する。また、1984年にはアメリカ・バイオリン製作者協会から、バイオリン制作の職人として世界に5人だけの「無監査マスター・メーカー」の称号を授与され、世界的な名声をほしいままにする。
 2002年に自伝『海峡を渡るバイオリン』(鬼塚忠・岡山徹による聞き書き、河出書房新社)を出版。翌年からはこれを原作とした漫画『天上の弦』が『ビッグコミック』(小学館)で連載され、大きな反響を巻き起こした。
 2012年5月13日、大腸がんで死去。享年82。

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