寝られたまはぬままには、 源氏 「我は、かく人に憎まれてもならはぬを、 今宵なむ、 初めて憂しと世を思ひ知りぬれば、恥づかしくて、 ながらふまじうこそ、思ひなりぬれ」 などのたまへば、 涙をさへこぼして臥したり。 いとらうたしと思す。 手さぐりの、細く小さきほど、 髪のいと長からざりしけはひのさまかよひたるも、 思ひなしにやあはれなり。 あながちにかかづらひたどり寄らむも、 人悪ろかるべく、 まめやかにめざましと思し明かしつつ、 例のやうにものたまひまつはさず。 夜深う出でたまへば、 この子は、いといとほしく、 さうざうしと思ふ。 女も、並々ならずかたはらいたしと思ふに、 御消息も絶えてなし。…