ボロい食堂に入った。 遅い昼。 ここに来るのも久方振りだった。 職場を離れる事に決めてから財布に優しい生活を心掛けている。 優しくしているつもりも一向に応えてくれないが。 親の心子知らずである。 少しのテーブル席に窓際の長椅子席。 少しベタつく床。 すすけた天井の白。 無造作に置かれたスポーツ紙とくたびれた下世話な雑誌。 ラジカセのいつものスピッツ。 変わらないな。と思う反面 きっと今更、変わることなど出来ないのだ、ここも。とも感じる。 場末の昭和感の漂うこの店は、壮年男性とその奥さんであろう女性で切り盛りしている。 時折顔を出すその男性は、何かのっぴきならない理由でキャリアを断念し、仕様がな…