前話に載せきれなかった『農民哀史』の一節をもう一つ二つ。 「父と小作料問題を話す。一反八畝三歩で収穫が七俵(約420㎏)。そのうち小作料が四俵と一斗一升(約260㎏、収穫の60%超)とは馬鹿な話だ」 「… 尋常四年の妹は、二歳になった実(みのる)を背負って、渋々学校へ出かけて行く。――先生が赤っ子をつれて来るとうるさいからって ――学校は赤っ子を負って来る所じゃないって? ――おらあ本を読みてえが、実が騒ぐんで先生が外へ出ろと言うから…… 私は、妹の涙ぐんだ声をけさも耳にした。そして何かを言おうと、口籠ったが、そのままやめた。毎朝、母に不平を訴えるようにつぶやきながら、か細い身体に赤っ子を背負…