数ならで なにはのことも かひなきに 何みをつくし 思ひ初《そ》めけん 源氏のもとに 田蓑島での祓いのゆうにつけた 明石の上の返事が来る (源氏の君に by 明石の上) 〜とるに足らない身の上の私 何もかもあきらめておりましたのに どうして身を尽くしてまで お慕い申し上げることになったのでしょう 【第14帖 澪標 みおつくし】 数ならで なにはのことも かひなきに 何みをつくし 思ひ初《そ》めけん 田蓑島《たみのじま》での 祓《はら》いの木綿《ゆう》につけて この返事は源氏の所へ来たのである。 ちょうど日暮れになっていた。 夕方の満潮時で、 海べにいる鶴《つる》も鳴き声を立て合って 身にしむ気…