見た目、正常。中身、異常。Episode: Mahiro&Takeru 中学2年・秋、放課後。 放課後の図書室は、人の気配がなくしんと静まり返っていた。本の並ぶ列の奥で、タケルは無言で本棚を整理していた。向かいの棚の反対側――姿は見えないが、同じ当番の高橋マヒロも黙々と作業している。 特別仲が良いわけでも悪いわけでもない。真面目で成績優秀、大人しい女子。教室でもそんなに目立たない。その日も言葉は交わさず、静かな空気が流れていた。 ――ふいに、彼女が近づき、距離が1メートルを切ったときだった。 「パッ」と、世界が光ったような感覚。 目の奥がチカチカした。軽い眩暈のような違和感。だが、ほんの一瞬で…