琴の音を最後に生で聞いたのは、もう半世紀近く前のことになろうか。 親戚の家で、いとこの女の子たちが、ハレの日にはよく座敷で琴を弾いていたものだ。そう、女の子…。趣味のいい調度品、高価な掛け軸、手入れの行き届いた中庭。琴というと、いまでは和服に身を包んだ上品な女性が優雅にかなでるものといったイメージだ。かしこまって、静かに耳を傾ける…。 では、むかしのひとはどうだったろう。 孔子や柿本人麻呂もたしなんだという琴について、平安人はどう思っていたのだろう。実際に琴の音を耳にした貴族階級のひとたちは、なんと感じたのだろう。 琴引山の大国主 頓原(とんばら)ラムネ銀泉 騒擾(そうじょう)の琴の音 琴引山…