今年初めて上京し、神保町をうろついた。連休中にわざわざ出かけたのは三省堂神保町店が「老朽化」のため建て替えることになり、最後の営業が5月8日だと知ったからだ。あの店舗に深い思いはないが、新店舗が完成するまで生きているかどうかわからないので、40年間しばしば足を運んだ三省堂に、この機会だから行っておこうかと思ったのである。 神保町を歩き始めた1960年代なかばからしばらく、神保町で気軽に使えるトイレは三省堂だけだった。まだ東京堂も書泉グランデも書泉ブックマートもなかった。パチンコ屋のトイレは使えたかもしれないが、私は中学生から高校生の時代だ。少しでも多くの本を買いたいのだから、トイレのために喫茶…