🌿源氏 紀伊守の屋敷に忍び込む【源氏物語 30 第3帖 空蝉1】 眠れない源氏は、 「私はこんなにまで人から冷淡にされたことは これまでないのだから、 今晩はじめて人生は悲しいものだと教えられた。 恥ずかしくて生きていられない気がする」 などと言うのを、 小君《こぎみ》は聞いて涙さえもこぼしていた。 非常にかわいく源氏は思った。 思いなしか手あたりの小柄なからだ、 そう長くは感じなかったあの人の髪も これに似ているように思われてなつかしい気がした。 この上しいて女を動かそうとすることも見苦しいことに思われたし、 また真から恨めしくもなっている心から、 それきり言《こと》づてをすることもやめて、…