文芸評論家。
1951年石川県生まれ。
早稲田大学政治経済学部政治学科卒(政治思想史)、大学院博士課程修了(日本近代文学)、
北海道大学文学部助教授、早稲田大学政治経済学部教授を経て
現在、東京工業大学世界文明センター特任教授。
主な著書に
『感覚のモダン 朔太郎・潤一郎・賢治・乱歩』せりか書房、2003年 『映画と写真は都市をどう描いたか』ウエッジ選書、2007年
映画と写真は都市をどう描いたか (ウェッジ選書)
感覚のモダン―朔太郎・潤一郎・賢治・乱歩
宮沢賢治の『春と修羅』には、彼が心象スケッチと呼んだ70編の口語詩が、8つのパートに分けておさめられています。前回ご紹介した「春と修羅」に続くパートに、「真空溶媒」というちょっとシュールな作品があります。本文248行という、「小岩井農場」「青森挽歌」に続く長大な作品です。この作品は内容が超現実的であるばかりでなく、シュルレアリスムの「自動記述(オートマティスム)」や「デペイズマン」に似た手法が用いられています。何人かの研究者が、賢治の心象スケッチ全般についてシュルレアリスムとの類似を指摘していますが、この作品からはそのことが特に感じられます。「自動記述」は、あらゆる先入観を排して自動的に文章を…
クトゥルー神話の生みの親として知られるH.P.ラヴクラフトが1927年に発表した小説『宇宙の彼方の色(原題:TheColor Out of Space)』を原作としたドイツ映画『宇宙の彼方より』の世界初の劇場公開が2023年6月3日(土)より下北沢トリウッドにて始まり、上映初日を満席でスタートさせた。それにともない3週目の上映延長が決定した。 (C)SPARENTOR, Studio / Produzent / Cinemago 「映画史上、最もラヴクラフト=“原典”の魅力を忠実に描いた作品」という呼び声も高い本作は、ベトナム系ドイツ人のフアン・ヴ監督が“原典”を崇拝しつつも、ラヴクラフトが唱…
「幻想と怪奇 特集:夢象の世界」(歳月社 1974年) 「早稲田文学 夢まぼろしの物語」(早稲田文学会 1986年) 文学系雑誌の夢特集に移ります。夢理論よりはこちらの方が私の気性に合っているのか、気楽に読めました。が、どれとは言いませんが、いくつかの論文は、変な癖のある文章だったり、60年代の力みが感じられたり、無理やりこじつけたような論理展開だったりで、期待外れ。 「幻想と怪奇」では、何と言ってもオスカル・パニッツァーの「三位一体亭」が、グロテスクと狂気に溢れていて群を抜いていました。ただし、夢象の世界特集の枠外の掲載のようです。パニッツァーは名前はよく目にしていましたが、これまで読んでい…