月曜の朝は、いやだった。山羊(やぎ)の乳をもらいに行く日と決まっていたからだ。朝起きてすぐに「ほらっ」と母親に背中を押され、まだ眠い目をこすりながら家を出る。子どもの足で歩いても1、2分のところに八田さんの家があった。週に一度、月曜の朝早く、四合瓶1本の山羊の乳を、安くわけてもらうのである。 お店の冷蔵庫でキンキンに冷えた雪印の牛乳をたてつづけに3本飲むのが、小学5年のときの夢だった。山羊の乳など、牛乳を買うことができない自分たちのような貧しい家庭だけが、こっそり飲んでいる飲み物と思っていた。 八田さんの家は農家でも酪農家でもなかったが、山羊を3頭飼っていた。近所の子どもたちは学校の帰りに、八…