「黒死荘殺人事件(黒死荘の殺人)」は、アメリカの推理小説作家ジョン・ディクスン・カーの手になる作品で、現在我が国ではこれが著者名として冠されることが通例だが、本来はカーター・ディクスン名義で発表された第二作である。 そして、このペンネームは、1933年に「弓弦城殺人事件」を発表した際、アメリカの出版社が無断でカー・ディクスン(Carr Dickson)の名を出したことで著者との間に紛糾が生じ、その打開策として使われるようになったようだ。 カーと言えば、怪奇的な雰囲気を湛えながらも論理的ストーリー展開を具えた本格派の作品が多く、また密室の謎解き物を得意とすることは広く知られているが、この「黒死荘…