宝永3年9月12日。夜、市川武兵衛が江戸角筈の兵部屋敷で自殺して死ぬ。年は34。おととい11日巳時(午前9時)、兵部江戸へ到着した。13日に殿様へ御目見の予定で、この日武兵衛は御殿に出かけていろいろなことを取り決めて帰る。夜は春台院へ出かけて帰り、召仕には明日は未明に供に出るので、終えておきたい仕事の書付を確認するので勝手に2階へ来ないようにと云々。布団の上で腹を十文字にうまく切っていた。たての疵は6寸(1寸は約3センチ)ばかり、肱(のど)を横から貫き、前へと切り離し、腸をつかむためか左の手を腹の中へ差し込んでいた。無頼(苦しそうなさま)の自害であった。差し替えた脇差で切ってあった。書置はなか…