「いきますよぉ。」 掛け声とともに苦しそうな吸引音とむせび音。 カーテン越しの向かいのベッド、辛そうだ。あぁサクションか。あれはきついな。自分自身が数か月前脳腫瘍を摘出した直後の集中治療室で何度も味わった苦痛。それを生々しく思い出す。 隣のベッドの主は排泄がままならぬようで、時折オムツ交換の音と臭いもくる。看護師さんは手慣れた手つきで黙々ととこなしていく。 入院生活は、隣人が、同室者が頻繁に入れ替わる。幸せに退室していく方。そうでない方もいる。そして自らの病に怯えるニューカマー。それらの方々との生活はまさに異次元空間だった。そんなことに敏感に思いを馳せてしまえばこちらの神経がおかしくなる。意識…