(『シャーロック・ホームズの冒険』を読んだことのない人が、こんな文章を読むわけがないと思いますが、何編か真相を明かしていますので、一応お断りしておきます。) 何十年ぶりかで『シャーロック・ホームズの冒険』を読んでみた。昔読んだのは創元推理文庫版[i]だったが、今回はハヤカワ・ミステリ文庫[ii]である。「ボスコム渓谷の謎」のように細部を忘れていたり、そもそも「緑柱石の宝冠」などはストーリー自体をまったく覚えていなかったのだが、「唇のねじれた男」や「赤毛連盟」あたりの有名作に関しては当然筋書きを忘れるはずもなく、読みかえすこともなかったかな、という印象であった。 昔読んだ頃は、まだ江戸川乱歩の「…