まだパレードの真っ最中だというのに、隊列が途切れてしまった。本来、色とりどりの仮装をまとった参加者で埋るはずの800メートルのコース、その半分が無人となってしまっている。夜明け前の午前4時、立ち並んだ照明塔のまぶしさがむなしい。「10台目の山車が、スタート地点で故障してしまったようです」 テレビ局の女性アナウンサーが、ニュース速報でも読むかのように実況する。カメラはその動かなくなった巨大な山車の上で途方に暮れる、女性参加者を映し出す。地上10メートルほどのところにいるだろうか。花形という意味のデスタッキ役の中年の女性は、直径3メートルはあるかという羽根の背負子のために身動きが取れない。「涙ぐん…