第百六十六回芥川賞受賞作、砂川文次「ブラックボックス」を読み、その素晴らしさに感動。 選評を読むと、「方法の冒険がなく、小説的企みも薄く、退屈さは否めなかった」(奥泉光)とか「自然主義リアリズムの古めかしさと裏おもて」(松浦寿輝)とか「ベタなリアリズム」(島田雅彦)といった、要するに古めかしいという評価がこぞってなされているが、「文学的な挑戦は、目新しさの中にあるとは限らない」(小川洋子)、「ここには圧倒的な実感がある。もしもこの実感を古臭さと呼ぶのなら、私は胸を張ってこの古臭さを買いたい」(吉田修一)といったプラスの評価が上回り受賞に至ったようである。 奥泉光も「ここには何かしら切実なものが…