静かな息遣いが、胸の奥に眠っていた感情をそっと揺らす──。 2026年の耳で聴くと、このアルバムの“疲れた昂揚”が新しい意味を帯びる。 ここでは、声の余白から立ち上がる物語を手がかりに、その核心へ静かに近づいていく。 夜明け前の街に残るわずかな湿り気が、 1973年の空気をいまも静かに照らしている。 その湿り気は、華やかさの裏側に落ちる影の温度だ。 グラムロックが最も強く光を放った年、 Mott the Hoople はその光の中心に立ちながら、 どこかでその眩しさを信じ切れずにいるように見えた。 派手さよりも、光の縁に落ちる影のほうが彼らの輪郭をよく映していた。 『Mott』は、70年代ロッ…