(短編によっては、犯人等を明らかにしていますので、ご注意ください。) 先頃(といっても、2018年)新訳が出た『エラリイ・クイーンの冒険』(1934年)[i]は、作者の最初の、そして代表的な短編集との定評がある。 『クイーンの定員』(1951年)にも選出された[ii]が、これはクイーン自身の選定なので、自画自賛では、あまり重きを置くわけにもいくまい。とはいえ、我が国のクイーン・ファンの間でも、やはりクイーンの短編集といえば、まず本書が挙げられるようだ。 「冒険」というタイトルも、コナン・ドイルの向こうを張って付けたものだろうから、作者としても自信があるらしいのがわかる。ただ、正面切って言うこと…