(収録作品の犯人等を明かしています。またモーリス・ルブランの長編小説に注で触れていますので、ご注意願います。) 『エラリイ・クイーンの新冒険』[i]はクイーンの第二短編集だが、一番目立っているのが中編の「神の灯」である。同作は、江戸川乱歩が惚れ込んで、ディクスン・カー(カーター・ディクスン)の「魔の森の家」とともに自分名義の翻訳を雑誌に掲載したことでも有名[ii]で、本短編集が売れたのは「神の灯」のおかげだとまで言っている[iii]。 現在においても、本短編集と言えば「神の灯」というのは変わらないようだ。「『神の灯』とその他」というのが、本書の手っ取り早い紹介で、残りの短編八編のほうは、どうも…