巨匠エラリー・クイーンは、短編の名手でもある。3名ほどの容疑者をあげておいて、鮮やかな決め手でそのうちの一人を犯人と名指しする。作品のハイライトを凝縮した形の短編は、デビュー当時から人気だった。それは2人のうちの一人フレデリック・ダネイが<EQMM誌>の編纂に尽力してからも衰えず、方々で発表された短編をいくつかの短編集として再版している。 1954年発表の本書は、短編というより10ページあまりのショート・ショート18編を収めたもの。各編に小さなアイデアがひとつあり、それをエラリーが最終ページで指摘して事件を解決する。ごちゃごちゃしたミスディレクションや背景設定がないだけ、純粋推理だけに特化して…