ヨーロッパ列車制御システム。
"European Train Control System"の略。
ヨーロッパの鉄道は、国ごとに信号システムが異なり、国際列車は、複数の国の信号システムを搭載した機関車(あるいは電車・気動車)を製造するか、国境駅で機関車を交換する煩雑な作業を必要とした。このような不便を解消すべく、UIC(世界鉄道連合)や、ヨーロッパの鉄道事業者が中心となり、ヨーロッパで統一した信号システムを構築することとなった。それが"ETCS"である。
1996年にEU規格となり、現在、実用化が進められている。
現在は主に、ヨーロッパの高速鉄道をターゲットとしている。
"ETCS"は製品名ではなく、信号システムの規格・仕様を定義したものであり、それらは公開されている(オープンアーキテクチャ)。具体的な製品名としては、独Siemensの"Trainguard"、仏ALSTOMの"ATLAS"、加BOMBARDIER(旧ADTranz)の"INTERFLO"などがある。
"ETCS"は、ヨーロッパ鉄道マネジメントシステム"ERTMS"(European Railways Transport Management System)を構成する一要素として位置づけられている。
2007年に開業予定のフランス高速新線東線(LGV-est)や、2008年に開業予定のオランダの高速新線"HSV-Zuid"で採用されることになっている。また、2005年12月より、ドイツのJueterbog(ベルリンの南西にある町)とLeipzig/Halle間において、試験運用が開始されている。
日本では、"ETCS"に対する興味関心は極めて希薄で、話題や文献はほぼ皆無なのが現状である。
ヨーロッパ以外にも、中国やインド、その他数多くの国で採用の動きがある。
ETCSは、EU、UICやISOなどの国際機関、ヨーロッパ各国政府や鉄道事業者が中心となって、国際規格化が進められており、近い将来、鉄道信号システムの国際標準規格となる可能性がある。