(犯人は一応伏せていますが、本書のプロットを詳しく紹介していますので、ご注意願います。) 『メグレ推理を楽しむ』[i]は、1957年作で、『メグレと火曜の朝の訪問者』と同年の長編のようだ。後者に感心していたのと、なにより、本書のタイトルが面白そうなので、期待して読んだ。初読である。もっとも、原題はMaigret s‘amuseで、「推理を」楽しむ、とは言っていない。 休暇をとることになったメグレが、最初はパリを離れて気候のよいリゾート地に出かけるつもりだったが、結局、自宅で過ごすことに決める。夫人と毎日、散歩や映画を観に出かけ、レストランで食事をとる。そんな熟年夫婦の日常が描かれるのも、ファン…