私は、文学に関して「新しい」ということはもうありえないし、それを目指すべきではないといつも考えている。前にも書いたことだが、ヌーヴォー・ロマンまでつづいてきた「新しさ」「文学の変革」というような概念は、工業製品と同じように技術革新がなされることを称揚する価値観であって、文学はその価値観と同じ基盤で考えることをやめる必要がある。 「新しさ」という概念・価値観は人の関心をひじょうに浅薄なものに向ける機能があって、その浅薄な関心の中では、暴力という題材と病んだ精神という性格にばかり注意がいってしまうことを反省できない。たかが言葉にすぎないのだが、言葉に依存する部分が大きい思考(そうでない種類の思考も…