父帝の御陵に来て立った源氏は、 昔が今になったように思われて、 御在世中のことが目の前に見える気がするのであったが、 しかし尊い君王も過去の方になっておしまいになっては、 最愛の御子の前へも姿を お出しになることができないのは悲しいことである。 いろいろのことを源氏は泣く泣く訴えたが、 何のお答えも承ることができない。 自分のためにあそばされた数々の御遺言は どこへ皆失われたものであろうと、 そんなことがまたここで悲しまれる源氏であった。 御墓のある所は高い雑草がはえていて、 分けてはいる人は露に全身が潤うのである。 この時は月もちょうど雲の中へ隠れていて、 前方の森が暗く続いているために き…