(本書収録の短編小説の内容に、かなり立ち入っていますので、ご注意ください。) ディクスン・カーの短編集が翻訳されたのは1970年で、創元推理文庫で一気に三冊がまとめて刊行された(第三集は少し遅れた)[i]。それでも積み残した短編は多かったし、その後、ラジオ・ドラマの脚本なども公刊されるようになるが、主要短編がまとめて読めるようになったのは画期的だった。 ところが、第一短編集(『不可能犯罪捜査課』、1940年)はともかく、第二短編集[ii](『第三の銃弾その他』、1954年)および第三短編集(『奇蹟を解く男』、1963年)は、収録作品が勝手にシャッフルされてしまった。カー短編の目玉である「妖魔の…