(犯人その他に触れています。) 1950年、いよいよディクスン・カーの歴史ミステリが始まる。1934年にはRoger Fairbairn名義の歴史ロマンスDevil Kinsmere があり、1936年にはノン・フィクション『エドマンド・ゴッドフリー卿殺人事件』の出版があったが、謎解きを中心としたフィクションの歴史ミステリは『ニューゲイトの花嫁』(1950年)が最初といえる。 カーの歴史ミステリは、A・デュマなどで培った、彼の歴史冒険小説好きが嵩じて始まった趣味的な創作と捉えられているが、最後に必ず付いてくる「好事家のための覚書」を見ると、極めて学究的なところが特徴で、完全なエンターテインメン…