(1930年代および40年代前半におけるカーの密室ミステリ、およびヴァン・ダインの長編小説のトリックに触れています。) 『毒殺魔』[i]もしくは『死が二人をわかつまで』[ii](随分対照的な邦題だな[iii])は、三年ぶりのフェル博士シリーズ作品である。『嘲るものの座(1941年)以来、1942年はシリーズ外の『皇帝のかぎ煙草入れ』、1943年は、初めてカー名義の長編が出版されず、1944年の本書が久々の博士登場作だった。 ところで、二階堂黎人によると、「カーの邦訳された本の中で、長い間最も入手困難だったのが、創元推理文庫に入っていたこの作品(『毒殺魔』)だった」[iv]、という。 へえ、そう…