(本書の内容に触れているほか、『時計のなかの骸骨』およびアガサ・クリスティの長編小説に言及しています。) 1940年代後半になると、ディクスン・カーの創作力もめっきり衰えて、長編小説は急減する。数え方にもよるが、1930年代には、共作を含めて30冊(カー名義19冊、ディクスン名義11冊)もの長編小説が出版されているのに対し、1940年代前半には、11冊(カー名義5冊、ディクスン名義6冊)と、大きく減少した。後半になると、それがさらに7冊(カー名義3冊、ディクスン名義4冊)にまで落ち込んだ。 作量の低下に伴い、注目作も減ったというか、わが国でとりあげられることも少なくなった。江戸川乱歩の熱も冷め…