離れようとしている人間を引き留めることはできない。たとえ親子でも夫婦でも兄弟でも恋人同士でも、どれほど親しい間柄でも、他の人には、他の生き方があり、意に添わないことでも、認めなければいけない場合がある。それは、母から学んだ。母は教師として働いていたので、いっしょに過ごせる時間が短く、幼少時、寂しさを感じたこともあった。だが、それは母には大事な仕事があるからで、わたしといっしょに過ごすのがいやだからではないのだと、繰り返し刷り込まれた。母はそのことを言葉ではなく態度で示し続けた。(村上龍『MISSING 失われているもの』新潮社、2020) こんにちは。今日と明日、首都圏は外出自粛ですね。感染症…