英語文化遺産 #2 君は田中菊雄を知っているか
小学校(旧制)卒業という学歴のみで,後は独学で英語と向かいあい,山形大学教授となった田中菊雄先生(1893‐1975)の書物からことばを拾います。
田中先生の著作は何度,私のこころを揺さぶってきたのでしょうか。何度,絶望の淵から救ってくれたのでしょうか。今もときおりページをめくります。
田中先生,ありがとうございます。(UG)
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人生は真剣である。
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生ける草木は雨露を求めて止まない。この求めて止まぬ「貧しき心」こそ伸び行く生命の必須の要件である。
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「全生涯をもっていかに行くべきかを学び,全生涯をもっていかに死すべきかを学ぶ」セネカ
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苦難は人生の相である。どんな人でも,せい一ぱいのなやみを持っている。迷いに迷う!それが人間である。
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全体自分が今生きていることそのことが奇跡なのである。二宮尊徳翁の言葉をかりれば今生きていることが,"まるもうけ"なのである。ちょっとやそっとのことで不平なぞ言っておられるものではない。自分がこうして生きていられるのは一に人の音である。この感謝の気持ちに貫かれて今私ははげんでいる。
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四月四日(未明)
Henry Ryecroftはいよいよ終わりに近づいた。Money is time.(金は時なり)の章をいかに自分は青鉛筆に染めたであろう。研究社英文学叢書が嬉しくて嬉しくてならぬ。己は呉へこの叢書を読みに来たようなものだ。この書がおれを活かした。昨日はついにMan & Supermanを38頁まで読んだ。今日は一幕を終わり更に第二幕も終わる計画なのだ。こんなに熟語に富んだ書はない。四月中にMan & Superman,Silas Marner,The Story of My Heartの三冊を是非読みあげたいと思っている。
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自分はこの四十年常に先人先輩の労苦に対する感激の中で生きて来た。思えばこの柔和な気持ち一つが私のただ一つの取柄であったと思う。また自分は不思議にもよい師友にめぐまれたことをいつも感謝している。
参考文献
田中菊雄(1992)『英語研究者のために』講談社.
田中菊雄(1960)『わたしの英語遍歴—英語教師のたどれる道—』研究社.