研修医制度の見直しの方向性

今日の日経より。

厚労省文科省は二日、医師の臨床研修制度の見直し案の骨子を公表した。必修科目を七から三に減らし、将来専門にしたい科目の研修を、いまより半年長く受け入れられるよう見直す。専門分野に精通した医師の戦力として活用できる。都道府県ごとに研修医の定員に上限を設けて、医師数の地域偏在の是正も目指すが、実効性には課題も多い。

まずは、現行の臨床研修制度は下記のようになっているそうです。

<1年目>
内科…6か月
外科…3か月
救急…3か月
<2年目>
小児科…1か月
産婦人科…1か月
精神科…1か月
地域保健医療…1か月
将来専門にしたい科目…8か月

そして今回の見直し案は下記の通り。

<1年目>
内科…6か月
救急…3か月
将来専門にしたい科目…3か月
<2年目>
地域医療…1か月
将来専門にしたい科目…11か月

これははっきりいって大問題。
まずそもそも「研修」なのに、「労働力」として活用するということ自体が本末転倒ですし、既に現場では研修医はフルに働かされています。一番労働条件がひどいのが実は現在の研修医。連続勤務・夜勤当たり前、雑務が多い、その割に見習レベルの少ない給与、そしてその合間にレポートや勉強…と、疲労困憊状態です。労基署にまっ先に駆け込むのは実は研修医、というくらいの現状なのに、余計にこれは彼らの負担を強いることになります。そして2年間という研修期間は変わらないために必修科目が減少するのも大問題。記事でも上昌弘・東大医科学研究所特任准教授が指摘しているように、教育の場を医師不足解消の材料とすべきではなく、医師不足は報酬や開業医との連携で解決すべき問題だと私も思います。
確かに医学部の定員増による医師増策は10年近くかかる対策ですから、短中期的対策が必要なのは事実ですが、さすがにこれはちょっと違うのではないかと思いますが。
偏在解消策にしても、機械的に人数上限を決めるより以前の大学医局制度の方がまだ調整弁としては優れているように思います。そもそも現在の研修医制度はスタート時から問題続出で、今頃見直しというのも…といっても仕方がないことではありますが。
研修医はあくまで研修医。そこを間違うと事故頻発、疲弊感の増大、粗製乱造…となり、いよいよ「医療崩壊」となりかねないのではないでしょうか。

一方、看護師は…。

「新小児科医のつぶやき」御用会議の進み方
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20090131(長いですが、読んでみてください)
上記記事のコメントの中に、非常に本質を突いたといいますか、なるほど非常に鋭いなぁと思わせるものがありましたので、勝手ながら引用させていただきます。

tadano-ry 2009/01/31 11:25
 経営的な目で見ると、せっかく現場で鍛えて戦力になってきた看護師が辞めていかれる
事の方が遙かに重要な問題ですが、まあ呑気なことですね。実践能力なんて現場に放り
込まなきゃ身につかないでしょ。教育なんて極端な話一年でもいいんですよ。

 その一方で看護を立派な科学として成り立たせたい勢力がいる。現場主義は行き当たり
ばったりという一面も持っているのでそのこと自体は否定はしません。

 さらにその一方で、せっかく長い時間を掛けて教育するのだから、基礎教育だけでなく
医療の高度化や訪問看護の必要性についてもしっかりと教えて欲しいという要求もある。

 いろんな勢力が綱引きを繰り返した結果、大した結論が出ず、長い時間をかけた議論は
シカトされ結局官僚の作文が採用される。まあ官僚の狙い通りで、多くの審議会で繰り
返されていたパターンですね。

 看護教育について意見すれば、単に教育をどうするかという議論でなく、看護師の
キャリアパスをどうしていくかという議論が先にあって、その上で看護教育をどうして
いくか、という話になっていかなければおかしい
。審議会のメンバーにもお気づきの方は
いそうな感じですが、結局他の勢力からの意見に埋もれてone of themになってしまう。

 医師についても同様で、これまで医局の存在でコントロールされていたキャリアパス
臨床研修制度の導入で滅茶苦茶になってしまった。新臨床研修制度の導入に際する議論を
会議録から拾ってみると、実はそれが大きな狙いの一つでもあったことが推測されます。

ただ何ともお間抜けなところですが、崩してしまった後のことは何にも考えてなかったwww
というより結論が出なかった。「とにかくやってしまおう」と突っ走ってしまった結果が
今の状態です。

ここりん 2009/01/31 12:09
現場では、7:1看護ができてから、准看、であろうとなんであろうと、免許があれば、採用されてます。
4年制もいいですが、そのうえ2年も行って、苦労して、労働環境のわるいところで働くのは、どうかと思います。
ある程度の企業で、生理休暇もふつーにとって、休み、ボーナスもそこそこあるところに働いているOLがうらやましい。
それで、ある大企業が、看護師募集したら、数人枠に200人の応募があったとか。看護師不足といわれているのに、どこから湧いてくるのか。

Hekichin 2009/01/31 12:31
看護教育 大学4年制サイドの本音は看護師に増えてもらいたくないというのは裏読みしすぎですかね。これだけ看護師不足が騒がれている以上、希少性から高めの給与を維持するためには大量養成はマイナス因子。臨床研修医制度をきっかけに厚労省に臨床看護研修制度を要求している看護協会あたりは、本当に研修制度ができると看護師不足で頭抱えると同時に腹の中では笑いが止まらない状況になるんでしょうねぇ。

あと大学院制度等については「と金」戦略なんでしょう。専門看護師、認定看護師なんても何の価値もない民間認定資格なんですけど、いずれ国家資格を要求し、Doctor同等のことが出来る様に要求してくるんでしょうね。

赤文字は私による加工ですが、確かにそう考えると現状について筋が通る面があります。みなさんはどうお考えですか? 私としては考えすぎであって欲しいところですが。