Glow(Reef)

もともとデビュー作においてもイギリス人には余り見られない野外派自然児的な佇まいのお唄が多かったのですが、2枚目の本作でGeorge Drakouliasのプロデュースを受けた*1ことによって、アメリカ西海岸の血がほどよくブレンドされ、演奏はよりプリミティブになりました。特にヴォーカルはステロイドでも摂取したとしか思えないのほどの突然の増強っぷりを見せていたので、本作を最初に聞いた時は皆、ホントに驚いたものです。別人か、と。


引き続きGeorge Drakouliasさんがプロデュースした3枚目も会心の出来で、長いお付き合いを予感させましたが、その後の作品は正直ショボいです。個人的には、Lenny Kravitzの"Circus"までに感じていた愛着と、それ以降の作品に感じた落胆とに似ています。

悲しいことに、このバンドは結局、解散したらしいです。忘れ去られるには惜しいバンドなので、彼らの曲を、今になって形見の気分でバンド演奏して楽しんでおります。


余談ですが、解散より一足お先に脱退したドラマーのDominicさんは、何とPeter Gabrielの"UP"の一部で演奏しているようです。何をどうひっくり返しても出て来なかった組み合わせだっただけに、驚愕しました。何かコネでもあるのでしょうか。

ギタリストのKenwyn Houseさんに至ってはギター学校で講師就任!という一報を目にしました。「!」って…んなことやってる場合じゃないだろうが!と、まずは酒でも奢りたい気分ですが、ご本人の人生ですから余計なお世話ですね。ご活躍をお祈り申し上げます。


Glow

Glow

*1:英断。

Ace of Spades(Motorhead)

"(We Are) The Road Crew"

という歌があります。バンドのドサ廻りに付き添う1ローディ*1の気持ちを歌にしたものと思われますが、1回で結構ですので歌詞をお読みください。泣けてきます。

  • ジャンクフードを食って気持ち悪くなる。
  • 彼女が居なくなって悲しい。
  • ホテルが見つからない。
  • 耳から血が出る。


特に悲惨だと思われる具体的エピソードを簡単に抜粋しただけでもそんな有様。

あの髭のLemmyが書いたと思われる、小学生並みのミニマリズムが徹頭徹尾貫かれた本作の詩文に、思わず涙が出たローディーの方(+涙が出るほど笑った一般人の方)も少なくないのではないかと思います。

どう考えても、以前にご紹介した"Plates+Dishes"と地続きに思われますが、こう見えて英国のバンドです。


Ace of Spades

Ace of Spades

*1:要するにバンドの雑用係さん。

Midnight Run(Martin Brest)

生きとし生ける総ての人間を信じたい、そんな気持ちにしてくれる究極の人間賛歌です。こんな映画があるだけでこの世の中は素晴らしいとさえ思えます。


…とまぁ、のっけから目の据わった面倒な人の匂いをショットガン的に発射してしまいましたが、冷静になって考えてみましても、メインからサブまで、印象的なキャラクター達がともかく林立状態になっている傑作です。

それぞれのキャラクターが絶妙にデフォルメされつつも繊細に描写されており、正に全員が愛すべき存在として輝いております*1

そして、その余りにも爽やかなエンディングに、アメリカ映画特有の無理*2も総て笑って許せるはずです。


…とまぁ、この映画に関しては語っても語っても語り足りないことが既におわかり頂けるかと思いますが、どれだけ書き立てたところで既に暑苦しいのがさらに暑苦しくなっていくことも理解はしております。本文をお読み頂いている方の中には本作未見の方も居られるでしょうから*3、個別の場面、台詞、表情についてはとりたてて言及しないことに致しましょう。。

ともかく、鍵穴に針金を差し込むJackに向かってBoucheが発砲するショットガンの銃声から始まって、LAの空港から歩いて遠ざかるJackの背中に絶妙のタイミングでエンディングテーマが被さるその瞬間までをもう何度見直したかも分からないこの映画に対して自分は多くを負い、感謝の気持ちが絶えることがありません。そこのところを簡潔に面白く表現する能力を自分が持ち合わせていないことが残念でしょうがありませんが、もし他人が私を語るときがあるならば「"Midnight Run"が好きな人」で済まされても悪い気は全くしません。むしろ嬉しい。


内心は認めたくなかったのですが、結局はベタで、浪花節的で、センチメンタルな映画が好きだ、ということを自分でも認めざるを得ないことに薄々感づいてきた今日この頃です。



追記:思えば、本作のオリジナル脚本*4を入手したことが伏線だったのでしょうか、つい先日、本作のサウンドトラックを遂に入手いたしました。探し続けること苦節10数年、邂逅とは正にこのことでございました。その瞬間に私の口を衝いて出た言葉は、恥ずかしながら「オーマイガァッ」でした(ホントに)。しかも価格は100円。ディスクユニオン関内店の凋落から余りにも多くの月日が経ってしまいましたが、白髪の紳士が出迎えてくれるレコード店・MASH RECORDを「新・何かが起きる店」として万を持して推挙致します。それにしても、神楽坂の頂点から向こう側(早稲田側)には、100円ビールの竹ちゃんと言い、超速超盛超美味チャーハンのりゅうほうと言い、今回のMASH RECORDと言い、名も知られぬままにのハイクオリティなサービスを提供し続ける経営体が多く観られます。ハイエンド且つセレブリティ的な手前側(九段側)に勝るとも劣らない素晴らしい地域です。


*1:男臭過多ではあるが。

*2:殴るとすぐ気絶するのはその一例。まるで『Aチーム』のコングのように直ぐに気絶するのは都合が良過ぎるという批判は甘んじて受けざるを得ない。

*3:私はあなたが可哀想だと思うが、同時に死ぬほど羨ましくもある。

*4:まだ全部読んでないので詳しくは触れないが、マニア垂涎のネタであることは確か。そんなマニアが居るのかは疑問だが。