ISSM2011
今年のISSM(International Symposium for Semiconductor Manufacturing)は、台湾の新竹で「e-Manufacturing and Design Collaboration Symposium」と合同で行う、という変則的なものでした。しかもメインタイトルは「e-Manufacturing and Design Collaboration Symposium」でISSMは付け足しのようになってしまっていました。ISSMファンの私としてはちょっと悲しいところです。とはいえ、今、勢いのある台湾の半導体の中心都市である新竹で開催されために、台湾の半導体業界の熱気を感じることが出来たのが収穫でした。9月5日、6日の2日間に渡って開催されました。
私の興味のある半導体ファブ(=前工程工場)内の物流制御に関する論文としては、以下のものが興味深かったです。全て台湾の人、団体の論文です。
- Analysis of Demand Patterns on Demand-Pull replenishment Application
- 需要プル補充適用における需要パターンの解析
- 国立交通大学、張永佳博士(Dr. Jasmine Chang)
- Goldratt提唱のバッファマネジメント(=需要プル補充)を半導体工場に応用する話。このバッファはファブ内のバッファではなく、完成品在庫を指す。品切れを起こさず、かつ、なるべく少ない在庫を保持することを目的として、その在庫コントロールの設定パラメータ(複数)を顧客需要の統計的パラメータ(複数)によって決定することを提唱。多数のケースのシミュレーション結果を整理し、そこからデシジョン・ツリーを作ることにより、その後はデシジョン・ツリーを用いれば、シミュレーションしなくとも、在庫コントロールの設定パラメータを決定出来る、と結論している。
- 多数のケースのシミュレーション結果を整理し、そこからデシジョン・ツリーを作る、という方法論がおもしろい。発表資料の内容も明確で理解しやすい。
- 統計パラメータを得るためには長期間の需要データが必要になるが、一方、製品ライフサイクルはどんどん短くなっている。であれば、そのような統計を長期間取ることが可能なのかが、私には疑問である。
- Quantify Equipment Capacity Impacts induced by Maximum Waiting Time Constraint through Simulation
- Dual Type Scheduling - Apply Multi-direction Neighborhood Search Algorithm
- デュアルタイプ・スケジューリング 多方向近傍サーチアルゴリズムの適用
- TSMC、Chien-Lin Chang氏
- 前年の発表は1工程の最適化をめざしたスケジューリングとディスパッチングであるが、今回は複数工程に拡張したものである。正直なところ、このスケジューリングのアルゴリズムをよく理解できていないが、概略としてはロットの処理順番を少しずつ変化させながら、ある目的関数の値が大きくなる方向に変化を積み重ねることで、よりよいスケジューリングを作成している(山登り法)ということらしい。
- 今回、スケジューラとディスパッチャをどのように結合したかが分かり、参考になった。スケジューラとディスパッチャの結合に私の興味があったのは、ファブ内にはいろいろな突発事が発生し、ロットの流れはスケジューラ通りにはならないからである。かと言って、突発時が起こるたびにスケジューラを動かしても、リアルタイムでスケジュール結果を得ることは出来ない。やはり、突発時にはディスパッチャで対応するしかない。しかし、そうは言ってもディスパッチャだけに任せるとスケジュールを反映出来ないので、スケジューラとディスパッチャをうまく結合する必要があるためである。
- Method to achieve demand target in a complicated product mix manufacturing
- 複雑な製品ミックス生産において需要目標を達成するための方法
- Winbond、Chiao-Han Fan氏
- 多品種少量生産において、それぞれの製品を決められた期日までに決められた数量完成させるのは工場内でロットの優先度をどのように決定するか、という課題を扱っている。この課題に対しては今までさまざまな手法が提案されてきた。この論文が提案する方法は、①個々の製品のプロセスフローについて工程間の標準サイクムタイム(待ち時間も含む)を何らかの方法で設定する。②各製品の現在の完成品の数と月末までの目標数の差と、WIPの分布と、月末までの残り日数から、ある予め決められた「流れをチェックする工程」での必要スループットを算出する。③任意の工程から、その下流で一番近い「流れをチェックする工程」までの実際のWIPと、標準サイクルタイムと必要スループットからリトルの法則を用いて計算したWIPの比を、その工程(「任意の工程」と言った工程)でのロットの優先度にする、というもの。
- この手法は、いろいろ検討すべき内容があるように思えて、興味を持った。