行ったつもりのアテネ:ハドリアヌスの門
紀元一三二年に建立された高さ十八メートルの「ハドリアヌスの門」は、このゼウス大神殿のすぐそばにある。そして門のフリーズには、次のような文字が刻み残されている。
まず、アクロポリスがある西側には、「ここはアテナイ、テセウスの古き都」。ゼウス神殿がある東側には、「ここはハドリアヌスの都、テセウスの古代の都にあらず」。
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これがハドリアヌスの門です。この光景を見たとき私は「こんな、車がびゅんびゅん走っているところにあるんだ! こんな環境では全然、古代を想う気になれないよ。」と思いました。アテネは現代の一国の首都でもある、と、当たり前のことを思い出しました。
(くどいようですが、これはあくまでバーチャルな旅です。私の妄想です。その妄想のなかでは)ホテルから歩いてきていて最初にこの門を見、次にゼウス神殿に気づいてそちらに向かった、ということになっています。
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エフェソスの商人エラストスが多島海の航行のためにわたしに貸してくれた船はパレロン湾に投錨した。そしてわたしは故郷に帰った人のごとくアテナイに落ち着いた。わたしはあえてこの美に指を触れ、このすばらしい都市を完璧な都市にしようと試みた。長い衰退期の後にはじめてアテナイは人口を増しつつあったが、わたしはその面積を倍に広げて、エフェソスの川のほとりに新しいアテナイを――テセウスの町とならんでハドリアヌスの町を――早くも思い浮かべていた。すべては今後の企画と建設とを待たねばならなかった。
そして、オリュンピエイオン(=ゼウス神殿)を完成させるという話が出てきます。
六世紀も昔に、オリンポスのゼウスに献ぜられるはずの大神殿は、着工されるとすぐに放棄されてしまった。わたしの職人たちはその仕事に着手し、アテナイはペリクレスの時代以来味わったことのない楽しげな活況を呈した。わたしはローマのシㇽラの略奪の跡を修復したが、これでセレウコス王朝が完結させようとして果たさなかったことをわたしは成し遂げたわけである。工事を視察する必要上、わたしは毎日、機械や巧妙な滑車仕掛けやできかけの柱身や、青空のもとにむぞうさに積み上げられた白い石塊などの、入り組んだ迷路の中を行ったり来たりした、そこには船を建造中の造船所の興奮に似たものがあった
ここから細い道に入って、プラカというお店のいっぱいある地区に向かいます。ここにはハドリアヌスの名前をつけた道「アドリアヌウ Adrianou」があり、楠見千鶴子さんが「癒しの旅 ギリシア・エーゲ海」の中でこの道のことを「プラカの中のプラカの道」と形容していました。この道を歩くことにします。